公式見解
「子がないこと」を要件から削除しても問題ないとする論拠

● 血統的にも問題ない

性別訂正が行われても「父」が「母」に、または「母」が「父」になるわけではありません。戸籍法でも「父」「母」が何かという定義はありません。単に男が父、女が母と思いこんでいるだけです。医学的に、精子提供者が父、卵子提供者が母と考えれば、その後性別が変更されようとこの関係は崩れません。
また、この性別訂正は遡及効をもたないはずです。(遡及効を持てば、結婚そのものが無効となるはずなので)遡及効がなければ、その子供が生まれた当時は性を変更する前ですから、その時点での父母の関係は訂正されません。このように法理論的にも問題がないはずです。
名前を変更した場合では、子供の戸籍にもその変更を波及させるかどうかは選択できることになっています。つまりは現在が「花子」であったとしても、子供の戸籍上は、父「太郎」ということにすることができるわけです。これと同様に父母の欄はそのままとするということは、無理なことでもなんでもないと考えます。どうしても難しければ、子の戸籍が配偶者側に移っているなど分かれていれば、当事者の性別が変更されたことは子供の戸籍を見ただけでは全くわかりませんから、子供の人権も充分守れます。
そもそも、これを問題にするとなると、現在名前の変更は可能になっている点からして「花子」さんが「父親」であるという事態がありうるわけで、このことが元々問題あるといういうことになってしまいます。ですから、血統的にも問題は無いと考えられます。

● 非嫡出子の問題

これは、前から言われていたことですが、特にMTFの方の非嫡出子に関する認知の問題があります。性別訂正が終了した後に非嫡出子が現れてこれを認知するとなるとどうなるのでしょう?この場合、性別訂正を無効とすることになるのでしょうか?それとも認知を認めないのでしょうか?
認知を認めないのであれば、子供の権利が大きく損なわれます。
また、認知すれば性別訂正が無効となるとなれば、必至で認知を拒むという事態も想定されます。この場合は、子供の権利を侵害するだけでなく、親子関係に大きな影響を与えることはいうまでもありません。
このように、法的にも無理があるように思います。

● 子に対する人権侵害、家族の崩壊につながるのでしょうか

これも、よく考えてみれば実際には無いのではないかと思えます。
もし、子供にとって葛藤があるならば、それは戸籍の訂正時ではなくおそらく性の変更を開始した時期になると思われます。外見が男性または女性形に変化する途中は、それは違和感があるでしょうし、子供にとっても恥ずかしい思いとかたくさん考えられます。でも、家族であるならば、その過程で話し合い、折り合いをつけて生活していっているはずです。そして、性別適合手術も終わって完全な女性または男性に生まれ変わったのであるならば、子供にとってはもはやその時点では性が変わったことを素直に受け止められるようになっているはずです。戸籍の性別訂正は、それを単に法的に追認するというだけのことです。ですので、戸籍の性別の変更が親子関係に重大な問題をもたらすとは考えられません。こうなれば、逆に「子供がいる」ことが性別訂正の障害になるのならば、親も「子供さえいなければ」という思いが出ないとも限りませんし、子供の側でも自分がいるために親が幸せになれないということになれば申し訳ないという気持ちになり、お互いが不幸になります。
つまり、性別訂正が不可になる方が、かえって混乱を招き、家庭崩壊につながりかねないのです。また、性別訂正を行えば家庭崩壊につながるという論理は、子がいる場合は性別適合手術も認めない=ガイドラインに準拠した治療も認めないということになりかねません。

このように、どう考えても「子の無いこと」を理由とするのは無理があるように思えます。

「自分の力ではどうにもならないこと」を理由とされるのは深い絶望に襲われます。真剣に自殺者が出ることを心配しなければなりません。このような事態にならないことを願うばかりです。
なにとぞご理解の程、宜しくお願い申し上げます。

上記の文章の無断引用、無断転記は堅くお断りします。(必ずご連絡を下さい。)

平成15年5月20日
家族と共に生きるGIDの会 (TransFamilyNet)