わたし達「家族と共に生きるGIDの会」は、性同一性障害を抱える者とその家族、支援者からなる組織です。
このたび、あえてこのようなお願いを致しますのは、子を持つ当事者と子ども、既に婚姻している当事者とその配偶者の立場についてのご配慮をお願いするためです。
子を持つ当事者とその家族は、社会の現実を考えると、表立って権利を主張する行動を起こしにくい立場にあります。このため、正確な数は分かりませんが、医療の空白期間を考えると、潜在的に治療や社会的改善を望む当事者とそのご家族は相当数存在するものと思われます。医療が性同一性障害をサポートする様になって以降も実際に多くの家庭を持つ当事者が、ガイドラインに沿った治療を求めて医療機関にかかっています。
こうした当事者は、障害であるということも知らず、自分自身のなかにある違和感が何であるかも分からずに、結婚し子供をもうけ一生懸命生きてきました。
こうした違和感がなぜあるのか理解できずに、社会に適応しようとするあまり、精神を病む寸前だったり、そのことにより家庭が荒んでしまったこともあります。
しかし実際、自分に違和感を覚えながらも配偶者と共に手をたずさえて一生懸命に生きながら子供達を育て、その子達を立派に成人させ、次の納税者、次の有権者を懸命に育ててきたかたもたくさんおられます。
こうした人達は、自分の中の混乱を抑え懸命に家庭、社会、国家に貢献しようと努力してきました。
社会に適応しようと一生懸命に生きてきた当事者と家族に、どんな「非」があるのでしょうか。
この法律によると残念ながら、社会の要請に応えて懸命に生きている当事者とその家族の人生を一生否定され続けることとなってしまいます。
当事者に子どもがあったり婚姻していると家庭裁判所に申し立てることすら許さないとされたこの法律は当事者の家庭を一刀両断に引き裂いてしまう誠に厳しくて冷淡なものではないでしょうか。
日本で性同一性障害の診断や治療が公にできる様になったのは平成9年のことで、海外先進諸国に遅れること数十年の時を経てやっと社会に認知されはじめたのです。
日本には性同一性障害という言葉すら存在しなかった世代の当事者とご家族がたくさんみえます。
愛する人と結婚した、愛する子供を持ったという過去は変えることはできません。
そしてまたその過去も自分自身の一部なのですから、その過去の人生を社会に認めて欲しい、現在そして将来の人生と家庭の幸せも社会に認めてもらいたいと願っています。
わたし達は、自分に子供がいることを誇りに思います、そして家族や社会と共に生きる幸せを望みます。
わたし達に生きる希望を与えてくれた、かけがえのない家族であり子供達だからです。
わたし達はこの法律によって、子を持つ当事者とその子ども、配偶者のある当事者とその配偶者の生き方を否定されてしまいました。これからはなにとぞ寛容にわたし達の生きてきた道もお認め頂けることを心からお願い致します。